本当に困っている人こそ在宅にいる

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前田隆洋先生(前田歯科クリニック 院長)

この度、大分県中津市にある前田歯科クリニック 院長 前田隆洋先生 にお話を伺いました。  

ーご施設の特徴について教えてください

当院は、平成27年4月に訪問診療を主体とした歯科クリニックとして開業しました。
平成29年6月現在、歯科医師2名 歯科衛生士4名、看護師1名 事務1名が中心となり3~4名の往診チームを作って、2台の往診車で訪問診療を行っています。
当院では1歳から105歳までの患者を、一か月に約100人、一日に7人から20人(約10か所)往診しています。
一日のスケジュールは、朝9時から17時頃までが訪問診療、17時から20時頃までが外来診療です。
最近では、摂食嚥下機能障害の患者の治療依頼が増えています。
その他、毎週木曜日を中心に九州歯科大学附属病院にて研究と臨床を行っています。

ー在宅医療に携わるようになったきっかけは何ですか

大正11年に曾祖父が歯科医院を開業しており、私も自然と歯科医師の道を歩むことになりました。
父の歯科医院で副院長をしていた時、開業40年を超える父の患者様の中に通院が出来なくなる方が出始め、その患者様の往診に行ったことが往診に取り組むきっかけです。
依頼は義歯の調整でした。次第に悪化していく容態の中で肺炎を繰り返し、主治医より絶飲食の指示が出ていました。「一口でも水を、食べ物を、食べさせたい!」というご家族の要望を受け、食形態を工夫し、水分にとろみをつけ、頭頸部のリハビリなども行いながら臨終まで関わりました。
当時は暗中模索、意匠惨憺でしたが、患者様のご家族、関わるコメディカル・介護関係者等に大変感謝され、本当の医療難民がそこにいることに気付き、また患者様本人が意思表示しやすい環境は在宅であると感じ、この仕事に人生をかけることにしました。

 

ー実際やってみてどうですか

正直なところ、「こんなにも大変だとは。」と思っています。
当院ではどんな症例や内容でも必ず歯科医師が訪問し、口腔ケアも自ら行うことが多いです。
依頼を受けて数か月以内に亡くなる方や急変する方が多いため、朝晩や休みの日にも連絡がきます。
診察して1週間後に亡くなるといった経験も少なくない為、可及的速やかに初回訪問を行っています。 副院長時代は外来が主体でその合間に往診に行っていましたが、往診を主体に開業してからは体力的にも経営的にもかなり大変です。
そして開業3年目の課題は、事業を継続していくための経営・人材育成を含めた運営を安定化することだと感じています。
地域の先生を一人でも多く巻き込みながら、在宅医療を中心とした地域医療の礎を作るお手伝いをしたいというのが今の目標です。

 

ー最後に一言お願いします

訪問診療は大変な面も多く、外来が主体の病院では「手が回らない」などという理由から、往診に対し消極的な先生方も多くいらっしゃいます。
スタッフにとっても体力的、精神的に疲労しやすい現場です。
ただ、歯科医師としてまだまだ未熟な私でも、こんなに必要とされるそのやりがいはピカイチです。
多くの先生がいつかは必ず取り組まなければならない在宅医療の道を、一日でも早く歩み出されることを祈念します。

前田隆洋先生 プロフィール
九州歯科大学附属病院 社会人大学院(歯科放射線科、口腔内科、口腔外科)
前田歯科医院(豊前市) 顧問
元 中津市民病院 (NST回診チーム、摂食嚥下・歯科担当。平成28年度)
日本歯科薬物療法学会 認定医
日本化学療法学会 抗菌化学療法認定歯科医
日本歯科放射線学会 歯科放射線准認定医
Infection Control Doctor
日本ACLS協会 ACLS PROVIDER
PDN(Patient Doctors Network) 嚥下機能評価研修会修了
肝炎治療コーディネーター
日本歯科医師会 災害歯科コーディネーター
日本緩和医療学会 緩和ケア研修会 修了
アストラテックインプラントBasicCourse修了
急速加熱型石膏系埋没材の操作条件と鋳造体の精度および適合性(論文)
所属組織・学会

中津歯科医師会、大分県歯科医師会、日本歯科医師会
中津市介護認定審査委員会委員
大分県北部地域重症小児ケース支援会議
日本口腔外科学会
日本摂食嚥下リハビリテーション学会
日本スポーツ歯科医学会
日本歯科薬物療法学会
日本有病者歯科医療学会
日本化学療法学会
日本抗加齢医学会
日本静脈経腸栄養学会
日本歯科放射線学会
日本老年歯科医学会


ー編集後記

ご苦労や困難、試行錯誤の多い在宅医療の道を先んじて進む姿勢と責任感に胸を打たれました。今回お話を伺い、前田隆洋先生のような志の高い歯科医師の方々が在宅医療へと進まれることを楽しみにしています。(編集後記:ナミ)

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